- 5月 24, 2025
百日咳の症状と対処法|長引く咳から子どもを守る完全ガイド2025

百日咳とは?
今年は百日咳が大流行しています。特に、2週間以上続く咳や、息継ぎも難しくなるような激しい咳き込みは、百日咳の可能性があります。
百日咳は、百日咳菌(ひゃくにちぜききん)という細菌が原因で起こる感染症です。 名前の通り、長期間にわたって激しい咳が続くのが特徴的な病気です。短くても数週間、長いと半年近く咳が続いたという報告もあります。
近年、予防接種を受けていても百日咳にかかるケースが増えており、社会的な関心が高まっています。 特に乳児では呼吸停止に至るなど、重篤な症状を引き起こすことがあるため、注意が必要です。
百日咳は「コンコンコンコン・・・!」と激しく続く咳(スタッカート)や、続いて「ヒュー」という息継ぎ音(レプリーゼ)が特徴的であること知られています。ただし、このような激しい症状を伴わないことも多く、注意が必要です。 また、感染力はインフルエンザやCOVID-19ほとではないですが比較的強く、家族内や学校などで集団感染を起こしやすい特徴があります。
この記事では、百日咳の症状や経過、治療方法、予防対策について詳しく解説します。 お子さんの健康を守るために、正しい知識を身につけましょう。
【百日咳の症状と病気の経過】特徴的な咳の変化を理解しよう
百日咳は、その病気の経過によって大きく3つの時期に分けられます。 それぞれの時期で症状が異なるため、正しく理解することが大切です。
第1期は「カタル期」と呼ばれ、発症から約2週間続きます。 この時期の症状は、普通の風邪とよく似ているため見分けるのが困難です。
鼻水、鼻づまり、軽い咳、微熱などが主な症状です。 お子さんの機嫌もそれほど悪くならず、食欲もあまり落ちません。
しかし、この時期が最も感染力が強い時期でもあります。 そのため、診断が遅れると周囲の人に感染を広げてしまう可能性が高くなります。
第2期は「痙咳期(けいがいき)」と呼ばれ、百日咳の最も特徴的な症状が現れる時期です。 この時期は約2週間から6週間続きます。
特徴的な症状は、激しい咳の発作です。 「コンコンコン」という短い咳が連続して起こり、その後「ヒュー」という音とともに息を吸い込みます。
この「ヒュー」という音は「レプリーゼ」と呼ばれ、百日咳の診断において重要な手がかりになります。 ただし、乳児や成人では、この特徴的な音が聞かれないことも多くあります。
咳の発作は夜間に多く起こり、患者さんもご家族も睡眠不足になってしまいます。 発作的な咳により、嘔吐してしまうことも珍しくありません。
乳児では、咳よりも無呼吸発作(むこきゅうほっさ)が起こることがあります。 無呼吸発作とは、一時的に呼吸が止まってしまう状態を指します。
また、乳児では咳の力が弱いため、特徴的なレプリーゼが聞かれないことが多く、診断が困難になることがあります。 そのため、長引く咳がある場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
第3期は「回復期」と呼ばれ、症状が徐々に改善していく時期です。 この時期は数週間から数か月続くことがあります。
咳の回数や強さが徐々に減少していきます。 しかし、完全に咳がなくなるまでには時間がかかることが多く、軽い風邪をひいただけでも咳がぶり返すことがあります。
百日咳の症状の重さは、年齢によって大きく異なります。 生後6か月未満の乳児では、重篤な合併症を起こすリスクが高くなります。
主な合併症には、肺炎、脳症、けいれんなどがあります。 特に肺炎は百日咳の代表的な合併症で、入院治療が必要になることが多くあります。
学童期以降の子どもや成人では、典型的な症状が現れないことも多く、「長引く咳」として見過ごされることがあります。 しかし、感染源となって乳幼児に感染を広げる可能性があるため、注意が必要です。
【百日咳の診断と治療方法】早期発見と適切な治療のポイント
百日咳の診断は、症状の特徴と各種検査を組み合わせて行います。 特徴的なレプリーゼやスタッカートがあれば診断の手がかりになりますが、すべての患者さんに現れるわけではありません。
診断に用いられる主な検査には、咽頭ぬぐい液を用いたLAMP法があります。精度は高いものの結果に1週間かかるというデメリットがあります。診察室ですぐにわかる抗原検査は15分程度で結果が得られて便利ですが精度が低いため見逃しも多く、「陰性」結果には注意が必要です。
これらの検査も100パーセント確実ではありません。 そのため、症状や経過を総合的に判断して診断することが重要です。
百日咳の治療には、抗生物質(こうせいぶっしつ)が用いられます。 抗生物質とは、細菌の増殖を抑えたり、細菌を殺したりする薬のことです。
マクロライド系と呼ばれる抗生物質が第一選択薬として使われます。 具体的には、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンなどです。
抗生物質の効果は、治療を始める時期によって大きく異なります。 カタル期(第1期)に治療を開始すれば、感染力の低下が期待できます。やっかいなことに咳症状の改善や症状の短縮には有効でないと考えられています。
抗生物質の服用期間は種類によりますが、通常3日から14日間です。 処方された薬は、症状が改善しても最後まで飲み切ることが大切です。
途中で服用をやめてしまうと、細菌が完全に除去されず、再発や耐性菌の出現につながる可能性があります。 医師の指示に従って、正しく服用しましょう。
対症療法としては、咳を和らげる薬や去痰薬(きょたんやく)が使われることがあります。 去痰薬とは、痰を出しやすくする薬のことです。
重症の場合や乳児では、入院治療が必要になることがあります。 酸素投与、輸液、栄養管理などの支持療法が行われます。
家庭での看護では、十分な水分補給と栄養摂取を心がけましょう。 咳の発作で嘔吐してしまう場合は、少量ずつ頻回に与えることが大切です。咳症状の緩和は困難ですが、市販のヴェポラッブの外用や1歳以上ではハチミツも有効かもしれません。
室内の湿度を適切に保つことも、症状の軽減に役立ちます。 加湿器を使用したり、濡れタオルを干したりして、湿度を50パーセントから60パーセント程度に保ちましょう。
【百日咳の予防と感染対策】予防接種と日常生活での注意点
百日咳の最も効果的な予防方法は、予防接種です。 現在、日本では五種混合ワクチンとして定期接種が行われています。
五種混合ワクチンには、百日咳、ジフテリア、破傷風、Hib、ポリオの5つの病気を予防する成分が含まれています。 生後3か月から接種が開始され、計4回の接種を行います。
初回接種は生後3か月から12か月の間に3回、追加接種は初回接種終了後12か月から18か月の間に1回行います。 さらに、11歳から12歳の時に二種混合ワクチン(DT)による追加接種があります。
しかし、予防接種を受けていても百日咳にかかることがあります。 これは、時間が経つにつれて免疫が弱くなってしまうためです。
近年、思春期や成人での百日咳患者が増加している背景には、この免疫の減弱があります。 そのため、妊娠中の女性への追加接種なども検討されています。
妊娠中の百日咳ワクチン接種は、生まれてくる赤ちゃんを生後数か月間、百日咳から守る効果があります。 妊娠28週から36週の間に「三種混合ワクチン」による百日咳の追加免疫を獲得することが推奨されています。百日咳単独のワクチンがないため三種混合ワクチンを用います。
就学前(5歳、年長さん)にも三種混合ワクチンによる百日咳の追加免疫が推奨されていますが、これらは公費の対象ではないため自費接種となります。
百日咳は飛沫感染によって広がります。 患者さんの咳やくしゃみによって飛び散った飛沫を吸い込むことで感染します。
そのため、日常生活での感染予防対策が重要です。 手洗い、うがい、マスクの着用などの基本的な感染予防策を実践しましょう。
特に、百日咳患者さんがいる家庭では、家族全員がマスクを着用することが大切です。 患者さんも、他の人に感染させないよう、咳エチケットを守りましょう。
咳エチケットとは、咳やくしゃみをする時にティッシュペーパーや袖で口と鼻を覆うことです。 使用したティッシュペーパーはすぐに捨て、その後は手洗いを行います。
感染した場合の隔離期間(登校・登園までの目安)については、適切な抗生物質治療を開始してから5日間とされています。 治療を行わない場合は、発症から3週間は感染性があると考えられています。
学校や保育園への復帰については、医師の許可を得てから行うようにしましょう。 感染拡大を防ぐために、症状が改善していても指定された期間は自宅で安静にすることが大切です。
家族内での感染を防ぐためには、患者さんの使用した食器やタオルを分けることも重要です。 また、定期的な換気を行い、室内のウイルス濃度を下げましょう。
百日咳が疑われる症状がある場合は、事前に医療機関に連絡してから受診することをお勧めします。 待合室での感染拡大を防ぐため、別室で待機できるよう配慮してもらえることがあります。
百日咳は適切な診断と治療により、多くの場合良好な経過をたどります。 しかし、乳幼児では重篤な合併症を起こす可能性があるため、早期の診断と治療が重要です。
長引く咳がある場合は、単なる風邪と考えずに、医療機関を受診することをお勧めします。 早期発見・早期治療により、お子さんの健康を守り、周囲への感染拡大も予防できます。