- 2月 8, 2026
【2026年2月最新】千葉市でインフルエンザB型警報|症状・検査・治療を家庭医が解説

この記事の要点
- 千葉市では2026年1月末からインフルエンザB型が警報レベルで流行中
- 小学校で学級閉鎖が多発、乳幼児も多く罹患している
- B型は発熱が目立たないケースもあり、風邪との区別が難しい
- 検査が陰性でもインフルエンザを否定できない
- ワクチンは重症化予防に有効だが、感染を完全には防げない
- 抗インフルエンザ薬は必ずしも全員に必要ではない
目次
- 千葉市のインフルエンザB型流行状況
- 発熱しないこともあるB型の症状
- ワクチンを打ったのにかかった理由
- 検査が陰性でも安心できない理由
- 抗インフルエンザ薬は必要か
- 治療薬の種類と当院の選択基準
- 受診のタイミング
- まとめ
はじめに
今シーズンは、千葉市でインフルエンザB型が警報レベルで流行しています。当院でも、1月末から連日多くの方が発熱や咳、倦怠感を訴えて受診され、検査でB型と判明するケースが非常に多くなっています。特に小学校での学級閉鎖が多発しており、乳幼児のお子さんも数多く罹患している状況です。
インフルエンザについては、ワクチンや治療薬、検査の意義など、さまざまな情報があふれています。しかし、その中には誤解を招きやすい表現や、極端な意見も少なくありません。
今回は、地域のかかりつけ医として、皆様がご家庭で判断に迷った際の「考え方の軸」をお伝えできればと思い、この記事を書きました。不安を煽るつもりはありませんし、「こうすべき」と断定するつもりもありません。ただ、正しい知識と現実的な見方を持っていただくことで、落ち着いて対処していただければ幸いです。
厚生労働省 インフルエンザ総合ページ
千葉市のインフルエンザB型流行状況(2026年2月)
現在の状況
千葉市では1月末からインフルエンザB型の患者報告数が急増し、警報レベルに達しています。市内の小学校では学級閉鎖が相次いでおり、乳幼児から成人まで幅広い年齢層で感染が広がっています。
インフルエンザA型とB型の違い
インフルエンザには大きく分けてA型とB型があります。一般的には、A型は冬の初めから流行のピークを迎え、高熱や関節痛などの症状が強く出やすい傾向があります。一方、B型は冬の後半から春先にかけて流行することが多く、A型に比べると症状の出方にばらつきがあるとされています。
ただし、「B型は軽い」「A型は重い」という単純な区別は正確ではありません。実際には、個人の体質や年齢、基礎疾患の有無などによって、B型でも重症化することはありますし、A型でも軽症で済むこともあります。
A型とB型は、インフルエンザウイルスとしては別の型に分類されます。両者とも表面にHA(ヘマグルチニン)とNA(ノイラミニダーゼ)というタンパク質を持っていますが、A型ではHA・NAに多数のタイプが存在し、トリやブタなど複数の動物にも感染するため、毎年少しずつ変わる変異とは異なり、ウイルスが一気に別物に生まれ変わる大きな変化(抗原シフト)が起こることがあります。
一方、B型は主にヒトに感染し、HA・NAのタイプは限られているため、このような大きな変化は起こらず、変異は主に小さな変化にとどまります。そのため世界的な大流行(パンデミック)は起こしませんが、季節性の流行は毎年みられます。
現在B型が流行している背景については、A型流行後の免疫状況や季節性などが影響していると考えられていますが、単一の明確な原因が特定されているわけではありません。
国立感染症研究所:インフルエンザ総論
今シーズンの特徴
今シーズンは、冬の時点ですでにB型が多く検出されています。例年の流行パターンとは少し異なる印象ですが、ウイルスの流行には年ごとの変動があり、必ずしも予測通りにはなりません。
大切なのは、「どの型か」よりも、「その方にとってどのような症状があり、どのような経過をたどっているか」を見ていくことです。
発熱しないこともあるB型の症状
発熱が目立たない場合もある
インフルエンザといえば「高熱」をイメージされる方が多いと思いますが、B型の場合、必ずしも38度以上の発熱を伴わないことがあります。微熱程度にとどまったり、発熱がほとんどないまま、咳やのどの痛み、強い倦怠感が続くケースも珍しくありません。
このため、「熱がないからインフルエンザではない」と考えてしまうと、判断を誤る可能性があります。
診察をしても、A型は典型例では「目が血走っていて、首のリンパ節がゴリゴリ腫れていて、喉も真っ赤になる」に対し、B型ではこれらを1つも認めず、抗原検査だけでわかるケースが少なくありません。
風邪との見分けがつきにくい
咳やのどの痛みが中心で、発熱が軽度の場合、通常の風邪との区別は非常に難しくなります。強いて言えば、倦怠感や全身のだるさが強い、周囲にインフルエンザの方がいる、といった状況があれば、インフルエンザを疑う手がかりになります。
しかし、症状だけで確実に見分けることはできません。そのため、検査や経過観察、流行状況などを総合的に判断することが重要になります。
小児と成人での症状の違い
| 年齢層 | 主な症状の特徴 |
|---|---|
| 乳幼児 | 急に元気がなくなる、食欲が落ちる、ぐったりしている、機嫌が悪い |
| 小学生 | 咳、のどの痛み、頭痛、発熱(個人差あり) |
| 成人 | 強い倦怠感、筋肉痛、頭痛(発熱は軽度のことも) |
小さなお子さんの場合、言葉で訴えることができないため、普段の様子との違いに注目していただくことが大切です。成人では発熱がそれほど高くなくても、強い倦怠感が続くことがあります。年齢や個人差によって症状の出方は異なりますので、「典型的な症状」にこだわりすぎず、普段との違いを見ていきましょう。
ワクチンを打ったのにかかった理由
ワクチンの目的は重症化予防
インフルエンザワクチンについて、「打ったのにかかった」という声をよく耳にします。これは、ワクチンの性質を考えると、ある程度は予想される結果です。
インフルエンザワクチンの主な目的は、感染そのものを完全に防ぐことではなく、重症化や合併症を予防することにあります。肺炎や脳症といった重篤な合併症のリスクを下げる、入院が必要になるような状態を防ぐ、といった効果が期待されています。
感染・発症を完全には防げない理由
インフルエンザウイルスは変異しやすく、毎年流行する型が変わります。ワクチンは、その年に流行すると予測される型に合わせて作られますが、予測が完全に一致するとは限りません。また、ワクチンによって得られる免疫は、ウイルスの侵入を100%防ぐほど強いものではありません。
そのため、ワクチンを接種していても感染・発症することはあります。しかし、接種していない場合と比べると、症状が軽く済むことや、重症化しにくいことが統計的に示されています。
ワクチンの効果(データで見る)
- 感染予防効果:約40~60%(年によって変動)
- 重症化予防効果:約70~80%
- 入院リスク低減:約60~70%
つまり、感染は完全には防げないが、重い合併症や入院のリスクは大幅に下がるということです。
「打ったのにかかった=無意味」ではない
ワクチンを接種してもインフルエンザにかかることはありますが、それは「ワクチンが無意味だった」ことを意味しません。たとえ発症したとしても、症状が軽く済んだ可能性、入院を免れた可能性、命に関わる合併症を防げた可能性があります。
ワクチンは万能ではありませんが、無意味でもありません。特に、小さなお子さんや高齢の方、基礎疾患をお持ちの方にとっては、重症化予防という観点から接種する意義があると考えられています。
検査が陰性でも安心できない理由
抗原検査の仕組み
インフルエンザの抗原検査は、鼻やのどから採取した検体に含まれるウイルスの一部(抗原)を検出する方法です。15分程度で結果が出るため、診療の現場では広く使われています。
発症初期や軽症では偽陰性がある
抗原検査は、ウイルス量がある程度多くないと陽性にならないという特性があります。そのため、発症してすぐの時期や、症状が軽くウイルス量が少ない場合には、実際にはインフルエンザであっても「陰性」と出ることがあります。これを「偽陰性」と呼びます。
特にB型は、A型に比べて検査の感度がやや低いとも言われており、偽陰性の可能性には注意が必要です。
陰性=インフルエンザではないとは限らない
検査が陰性だったからといって、インフルエンザを完全に否定することはできません。症状や経過、周囲の流行状況などを踏まえて、「検査は陰性だが、臨床的にはインフルエンザの可能性が高い」と判断することもあります。
逆に、検査が陽性であれば、ほぼ確実にインフルエンザと診断できます。つまり、抗原検査は「陽性なら診断できるが、陰性でも否定はできない」という性質の検査です。
抗原検査の特性
- 陽性の場合:インフルエンザとほぼ確定できる
- 陰性の場合:インフルエンザを否定できない(特に発症初期)
- 総合判断:症状、経過、流行状況を含めて判断することが重要
総合判断が大切
抗原検査はあくまで診断の補助手段であり、絶対的なものではありません。症状の内容、発症からの時間、家族や学校・職場での流行状況、診察時の所見などを総合的に判断することが重要です。
当院では、検査結果だけでなく、これらの情報を総合的に見て診断を行っています。検査が陰性でも、臨床的にインフルエンザが強く疑われる場合には、その旨をお伝えし、適切な対応をご提案しています。
抗インフルエンザ薬は必要か
健常な方では症状期間が半日~1日前後短縮される程度
抗インフルエンザ薬(タミフルやリレンザなど)は、ウイルスの増殖を抑える働きがあります。これにより、発熱や全身症状が続く期間を短縮する効果が期待されます。
ただし、その効果は「劇的に治る」というものではありません。多くの研究では、症状が続く期間を半日~1日前後短縮するという結果が示されています。つまり、薬を使わなければ5日間症状が続くところを、4日程度に短くできる、というイメージです。
すべての方に必ずしも必要ではない
健康な成人や学童であれば、インフルエンザは自然に治っていく病気です。安静と水分補給、必要に応じた解熱などの対症療法で、多くの方は回復します。
そのため、「インフルエンザと診断されたら必ず薬を飲まなければならない」というわけではありません。症状が軽く、日常生活に大きな支障がない場合には、薬を使わずに経過を見るという選択肢もあります。
重症化リスクが高い方では意義がある
一方で、以下のような方では、抗インフルエンザ薬を使用する意義が高いと考えられています。
- 乳幼児(特に2歳未満)
- 高齢者(65歳以上)
- 妊娠中の方
- 喘息や糖尿病、心疾患などの基礎疾患をお持ちの方
- 免疫抑制状態にある方
これらの方は、インフルエンザによる合併症や重症化のリスクが高いため、早めに薬を使用することで、そのリスクを下げることが期待されます。
「薬を出す/出さない」は優劣ではない
薬を処方するかどうかは、その方の状態やリスクを踏まえた判断です。「薬を出してもらえなかった=適切な診療を受けられなかった」ではありませんし、「薬を出された=優れた治療」というわけでもありません。
大切なのは、その方にとって本当に必要かどうかを考えることです。
治療薬の種類と当院の選択基準
複数の治療薬が存在する
現在、日本で使用できる抗インフルエンザ薬には、以下のようなものがあります。
| 薬剤名 | 投与方法 | 投与回数 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| タミフル(オセルタミビル) | 内服 | 1日2回×5日間 | 最も実績が豊富 |
| リレンザ | 吸入 | 1日2回×5日間 | 吸入手技が必要 |
| イナビル | 吸入 | 1回のみ | 服薬管理が楽 |
| ゾフルーザ | 内服 | 1回のみ | 比較的新しい薬 |
| ラピアクタ | 点滴 | 1回のみ | 重症例に使用 |
効果に大きな差があるわけではない
これらの薬は、作用の仕組みに若干の違いはありますが、症状を改善する効果に劇的な差があるわけではありません。どれを選んでも、適切に使用すれば一定の効果が期待できます。
新しい薬が必ずしも優れているわけではなく、古くから使われている薬が劣っているわけでもありません。
当院での選択基準
当院では、タミフル(オセルタミビル)を第一選択としています。その理由は以下の通りです。
- 長期間にわたる膨大な使用実績とデータがある
- 有効性と安全性が十分に確立されている
- コスト面でも優れている
- 年齢制限がなく、幅広い患者さんに使用できる
一方、ゾフルーザは1回の内服で済むという利便性がありますが、メリットが勝る場面は限られています。高齢者における入院率低下のデータはありますが、それ以外の点では他の薬と大きな差はありません。また、海外ではあまり注目されていない薬でもあります。そもそも、海外では風邪やインフルエンザくらいでは受診せず(予約しても数週間先になるため)、市販薬で対症療法をするのが一般的です。
ただし、これは「タミフルが最も優れている」「必ず使用すべき」という意味ではありません。お子さんが内服を嫌がる場合や、吸入がうまくできない場合、基礎疾患との兼ね合いなど、個別の状況に応じて他の薬を選ぶこともあります。
薬の選択は柔軟に
どの薬を使うかは、医師と患者さんが相談しながら決めていくものです。「この薬でなければダメ」ということはほとんどありませんので、ご希望や不安があれば遠慮なくお伝えください。
受診のタイミング
様子を見てもよいケース
以下のような場合には、慌てて受診する必要はなく、ご自宅で様子を見ていただいて構いません。
- 発熱があっても水分が取れており、ぐったりしていない
- 咳やのどの痛みがあるが、呼吸が苦しそうではない
- 普段通りに近い様子で、遊んだり会話したりできる
- 基礎疾患がなく、年齢的にも重症化リスクが低い
インフルエンザであっても、多くの場合は自然に回復していきます。無理に受診すると、かえって他の感染症をもらうリスクもありますので、落ち着いて様子を見ていただくことも大切です。
今すぐ受診すべきケース
以下の症状があれば、すぐに受診してください
- 呼吸が苦しそう、ゼーゼーしている
- 水分が取れず、おしっこが出ない(脱水の兆候)
- 意識がはっきりしない、呼びかけへの反応が鈍い
- けいれんを起こした
- 高熱が続き、ぐったりして元気がない
- 持病があり、普段と違う様子がある
小児・高齢者・基礎疾患のある方での注意点
小さなお子さんや高齢の方、基礎疾患をお持ちの方は、症状が急に悪化することがあります。「いつもと違う」と感じたら、早めにご相談ください。
特に、乳幼児は言葉で訴えることができないため、普段の様子との違いに注目していただくことが大切です。
迷ったときは相談してください
「受診すべきか、様子を見るべきか」は、判断が難しいこともあります。迷ったときは、電話でのご相談も可能ですので、遠慮なくお問い合わせください。
まとめ
インフルエンザB型が千葉市で警報レベルの流行となっている今、ワクチン・検査・治療薬について、さまざまな情報が飛び交っています。しかし、どれも万能ではなく、それぞれに限界があります。
ワクチンは重症化を防ぐ効果が期待されますが、感染そのものを完全には防げません。接種していてもかかることはありますが、それは無意味だったということではありません。
抗原検査は陽性なら診断できますが、陰性でもインフルエンザを否定することはできません。症状や経過、流行状況を踏まえた総合判断が大切です。
抗インフルエンザ薬は症状を短縮する効果がありますが、必ずしも全員に必要なわけではありません。重症化リスクの高い方では意義がありますが、健常な方では自然に治ることも多い病気です。
インフルエンザは、正しく恐れるべき感染症です。過度に不安になる必要はありませんが、軽視してもいけません。大切なのは、「その方にとってどうか」という個別の判断です。
ご家庭で判断に迷ったときには、以下のような軸を持っていただければと思います。
- 症状が強く、日常生活に支障があるか
- 水分が取れているか、ぐったりしていないか
- 重症化リスクがあるか(年齢、基礎疾患など)
- 普段と明らかに違う様子があるか
そして、迷ったときには遠慮なくご相談ください。当院は、皆様の「かかりつけ医」として、いつでもお力になりたいと考えています。