- 6月 22, 2024
- 6月 29, 2024
「赤ちゃんを守る」RSウイルスワクチン
RSウイルスとは?
RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus、RSV)は、特に乳児や高齢者に重篤な呼吸器感染症を引き起こすウイルスです。RSウイルスによる感染症は、気管支炎や肺炎などの重篤な症状を引き起こし、入院が必要となることも多いため、その予防方法が模索されてきました。免疫が未発達な乳児は特に重症化しやすく、その重症度のピークは生後間もない2ヶ月前後であり、ワクチン接種が開始する前の時期であるため予防が難しい感染症の1つでした。
RSウイルスワクチンの概要
そこで、妊娠中の母親にワクチンを接種することで、母体で作られた免疫物質を新生児に移行させることで赤ちゃんを守る「アブリスボ」ワクチンが注目されています。「アブリスボ」を妊婦に接種することで、母体内で抗体が作られ、それが胎盤を通じて胎児に移行します。これにより、出生時から乳児がRSウイルスに対する免疫を持つことができます。また、60歳以上の成人についても適応があります。風邪症状の軽減効果が期待されますが、主には妊婦の家族が接種することで生まれたばかりの赤ちゃんにRSウイルスを伝搬させないことが期待されます。
効果と有効性
臨床試験の結果、アブリスボワクチンは生後90日で81.8%、生後180日で69.4%の重度のRSウイルス関連下気道感染症の予防効果を示しました。また、一般的なRSウイルス感染症の予防効果も高く、特に妊娠28~36週に接種することでより高い有効性が確認されています (Journal of Pediatrics) (ファイザー株式会社 – ホーム | Pfizer Japan)。
有効性と安全性・副作用
臨床試験に参加した妊婦と出生した乳児において、妊娠や乳児の健康を脅かすような重篤な副作用の増加は確認されませんでした。主な服用としては注射部位の痛みや腫れ、軽度の発熱などが認められました。ワクチン接種による早産や新生児の異常の増加は統計的に認められませんでした 。医療機関の受診を必要とするRSウイルス関連下気道感染症に対しては、生後90日で57.1%低下、生後180日で51.3%の低下が報告されています (Journal of Pediatrics)。
接種スケジュールと方法
RSウイルスワクチンは、妊娠24週から36週の間に1回接種します。最も効果的な接種時期は28週以降とされており、接種は筋肉注射で行われます。接種後14日以内に出産した場合の有効性は確立していないため、接種時期には注意が必要です。インフルエンザワクチンなどの同時接種は問題ありませんが、新生児の百日せき予防のための成人用三種混合ワクチン(トリビック)との同時接種で、百日せきの免疫が得られにくい可能性が指摘されており、同時接種は避けることが望ましいとされています。次の妊娠をした場合に再度接種をしたほうがよいかどうかについては、まだデータがなく今後の研究結果が注目されています (ファイザー株式会社 – ホーム | Pfizer Japan)。
ワクチンの入手と接種場所
RSウイルスワクチンは主に産婦人科などのクリニックで接種が可能です。費用は自己負担となり、医療機関によって異なりますが、35,000円前後で提供されています。接種を希望する場合は、事前に医療機関に連絡して予約を取ることをお勧めします(当院予約フォーム)。
接種後の注意事項
ワクチン接種後は、数日間は注射部位の痛みや熱感が出現する可能性があります。発熱や子宮の張りなどが認められる場合は、医師へ相談をしてください。接種後は他のワクチンと同様に、15分程度は医療機関内やその周辺で体調の変化がないことを確認してから帰宅するようにしてください。
まとめ
RSウイルスワクチンは、RSウイルスによる乳児の重篤な呼吸器感染症の予防において重要な役割を果たします。その効果と安全性は臨床試験によって確認されており、多くの妊婦と新生児にとって有益な予防手段となります。適切な時期にワクチンを接種し、赤ちゃんの健康を守るために役立ててください。また、お孫さんをむかえるご家庭でも、赤ちゃんのためにRSウイルスワクチンの接種をご検討ください。