• 11月 18, 2023
  • 4月 3, 2024

月経困難症

生理痛が強い人は受診したほうがいいですか?

市販の痛み止めでなんとかなっている場合、特に受診までは必要ありません。しかし、生理痛の原因として子宮筋腫や子宮内膜症が関与していることも多く、これらは将来的に妊娠の妨げになったり、手術する必要がでてきたり、場合によっては悪性化するものも含まれています。生理痛の原因について評価を受けていない方は、超音波検査などの婦人科的な評価を受けられることをおすすめします。超音波検査は経腟的に行うことが一般的ですが、性交歴のない方や内診に強い抵抗を感じられる場合は、おなかからの超音波検査でもある程度の評価が可能です。

痛み止めが十分効きません、どんな治療法がありますか?

痛み止めの服用でも鎮痛効果が不十分な場合や、早急に効果的な治療を希望される場合はホルモン治療をおすすめします。低用量ピルの内服によって生理痛や経血量はかなり軽減することが期待できます。生理痛の原因が大きな子宮筋腫や内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)などの腫瘍性病変の場合は、治療効果が十分得られないケースもあります。低用量ピルは持病などによって使用できない方もいます。例えば次のような場合は使用ができません。

低用量ピルが使用できない方(一例)

・前兆を伴う片頭痛

・35歳以上の喫煙者の方

・血栓症の既往

・乳がんの既往のある方 など。

他にも使用上注意が必要な疾患が多数あり、服用に際して問診票などを用いて使用の可否をチェックします。低用量ピルが使用できない場合は、プロゲスチン製剤を用いたり、閉経が近いと予想される場合はGnRH製剤なども使用します。

ホルモン治療の違いについて

・低用量ピル

 2種類の女性ホルモンを含有しており、成分としては経口避妊薬とほぼ同等といえます。国内ではルナベル、ヤーズ、ジェミーナおよびこれらの後発品が処方可能です。国内では月経困難症に対して保険適応で処方されるものもLEP(レップ)、避妊目的で自費で処方されるものをOC(オーシー)と呼びます。使用目的は異なりますが、どちらも月経困難症の緩和と避妊効果をもっています。

 低用量ピルのヤーズ配合錠(後発品:ドロエチ)は月経前症候群(PMS)にも有効であることが知られており、月経困難症にPMSを伴う場合はヤーズ配合錠および、その後発品を優先的に使用します。低用量ピルだけで改善しない症状がある場合は漢方薬の併用をすることもあります。40歳未満の方では第一選択となるお薬です。主な副作用として不正出血があります。しばしば問題となる副作用にむくみや頭痛、胸の張りなどがあります。稀で重大な副作用に血栓塞栓症があります。

・プロゲスチン製剤

 低用量ピルが使用できない場合や、14歳未満など若年の方、GnRH製剤の導入前などに使用します。低用量ピルがエストロゲンとプロゲスチンの合剤であるのに対して、こちらはプロゲスチン単剤です。多くの場合、「ジエノゲスト」が内服薬として用いられています。エストロゲンとの合剤のほうが不正出血は少なく月経のコントロールにむいているのですが、エストロゲンは血栓症に関与するため、血栓症発症のリスクが高い場合(生活習慣病、高度肥満、喫煙、40歳以上など)はプロゲスチン単剤を選択します。プロゲスチンは月経周期は保たれたままか、または失われ、しばしば不正出血が問題となるお薬です。1日2回の服用を続けるだけなので、低用量ピルのような周期投与管理を必要としない点では、使用しやすいお薬といえます。また、生理痛や過多月経が問題で当分は妊娠を希望されない場合、避妊具のように子宮内に挿入する「ミレーナ」というプロゲスチン製剤もあります。子宮への挿入は数分で済み、5年間有効のため、内服薬のような飲み忘れも問題にならず、コストパフォーマンスにも優れています。

・GnRH製剤

 偽閉経療法とも呼ばれ、体内のホルモンを閉経状態とするため月経がとまります。注射製剤の「リュープリン」と、内服薬の「レルミナ」があります。通常、レルミナが選択されます。副作用として更年期症状のような、のぼせ・ほてりが出やすいため、すでにこられの症状を経験されている方にはむかないといえます。また、骨密度が減少することも知られ、1回の服薬は6か月以内が推奨されています。一度6か月使用した場合はいったん終了としますが、その時点で閉経を迎えていない場合は他の治療法を挟んだのちに再度GnRH療法を行う場合もあります。定期的に骨密度を検査しながらの治療継続が推奨されています。

処方だけの受け取りや、3か月より多く処方はもらえますか?

非対面の処方は医師法で禁止されています。また、保険診療で認められている処方は最大3か月となります。3か月処方ができるかどうかは服薬期間や症状に応じて医師が判断をします。経口避妊薬(OC)は類似の月経緩和作用をもちますが、自費診療ですので処方の日数に上限はありません。

ピルを使用中です。定期的に検査を受ける必要がありますか?

ピルの服用の有無にかかわらず、2年に1度の子宮がん検診が推奨されています。必要に応じてクラミジア検査や採血検査などが行われることがあります。必ずしも定期的な採血検査が必要なわけではありませんが、これらは年齢や生活習慣、持病の有無や主治医の考え方によっても変わります。

月経前症候群(PMS)はピルで治せますか?

月経の時期とほぼ一致して出現する頭痛や肩こりなどの身体症状やイライラや抑うつなどの精神症状をPMSと呼びます。特に精神症状が重たいものはPMDDと呼ばれます。ヤーズ配合錠(後発品:ドロエチ)・ヤーズフレックスにPMSの緩和作用が報告されています。月経困難症のある方はこれらを使用することでPMS症状も緩和できる可能性があります。低用量ピルで症状の十分な緩和が得られない場合は、漢方薬や抗うつ薬(SSRI)を併用することでより症状の緩和が得られる場合があります。

こんな時は受診を

・生理痛のため学業や仕事・家事など日常生活への支障が大きい。

・貧血を指摘された。

・月経量が多く、日中でも夜用ナプキンを使用したり、2-3時間で交換が必要になる。

・PMS症状で知人やパートナー、社会的な面で問題を感じている。

・月経を旅行や受験にぶつけたくない、ずらしたい。

現代人は妊娠年齢が遅く、出産回数も少ないため、生涯の月経回数が昔に比べて多いことが指摘されています。月経の回数が多いほど、子宮筋腫や子宮内膜症などは悪化しやすいこともわかっています。月経は我慢するもの、つきあっていくもの、という考えに縛られていないでしょうか。低用量ピルなどのホルモン剤の長期使用は健康や妊娠しやすさに影響を与えないことが明らかになっています。

月経のために犠牲になっている日数は年間で何日に上りますか?

それは生涯で何年間に相当しますか?

月経をコントロールすることで自分らしい生活を取り戻してみませんか。

わかばファミリークリニック 043-237-8800 ホームページ