• 11月 11, 2023

更年期障害

これは更年期障害?

更年期障害の典型的な症状としては、「ほてり」「発汗」「のぼせ」がよく知られていますが、日本人女性の中ではこれらの症状を主に経験する方は少数とされています。更年期の一般的な年齢範囲は45歳から55歳で、この時期に他の疾患で説明できない様々な症状が見られる場合、それらは更年期障害と呼ばれます。したがって、この年齢層での体調不良は更年期障害の可能性を示しているとも言えます。

ホルモン値の検査で更年期かどうかがわかる?

更年期のホルモン採血は一般的には有用でないと考えられています。更年期の女性ホルモン値は出たりでなかったりの乱高下が激しいと考えられており、採血のタイミングによって結果が変わってしまうため、ホルモン値の結果が必ずしも閉経が近いことを意味しません。例外的に、子宮を手術で摘出したために生理の有無がわからない場合は採血で確認を行うことがあります。

更年期障害の診断に検査は不要?

更年期障害以外の疾患を調べるために検査が必要なことがあります。動悸が強ければ採血やシャツ型の心電図を着用しての24時間心電図検査(ホルター心電図)を考慮する場合もあります。また、原因がはっきりしない諸症状では甲状腺疾患や副腎機能低下症、睡眠時無呼吸症候群などが原因のこともあり、採血や自宅での夜間睡眠時呼吸検査を実施することも可能です。当院では業者からご自宅へ機器を郵送することで、従来は耳鼻科や呼吸器内科への紹介や入院が必要であった検査を、ご自宅の慣れ親しんだ睡眠環境で実施することが可能です。採血結果は数日、自宅検査の結果は3-4週間ほどでご案内が可能です。

更年期障害の場合、どのような治療をする?

のぼせ・ほてり・発汗といったホットフラッシュにはホルモン補充療法が著効することが多いです。効果がなければ他の疾患を考慮する必要があるといえるほど、即効性・有効性は高いです。性交時の疼痛や陰部の不快感・乾燥する感じにも有効ですが、陰部の症状がメインの場合は膣錠も有効です。他、睡眠障害や倦怠感、関節痛などにも効果が感じられるケースが多い印象です。薬は内服や外用薬がありますが、簡便性を優先してシール状の貼付薬を第一選択としておすすめしています。持病などの関係でホルモン治療が行えない方や、ホルモン治療に抵抗感を感じる方には漢方治療をおすすめしています。漢方は即効性には乏しい傾向にあり、1か月程度の服用で効果が感じられない場合は他の漢方に切り替えを行うため、治療効果が感じられるまでに数か月かかることがあります。代替案としてプラセンタ注射もあります。有効性に関する医学的根拠は乏しいものの、保険適応があり、効果を実感される方がいらっしゃるのも事実です。ご希望に応じて注射は可能ですが、週1-2回の通院が必要となります。

ホルモン補充療法は安全?

長期間の使用により、乳がんの発生リスクの上昇が報告されています。一方で、そのリスクは大きなものではなく、喫煙や肥満、運動不足なども乳がんのリスクであることがわかっていますが、これらと比較するとその危険性はわずかであることも統計的に示されています。乳がんが心配であれば、生活習慣に気を付けて定期的な乳がん検診を受けることで、ホルモン補充療法による乳がんリスクへの対処(リスクヘッジ)は十分可能であると考えられます。また、血栓症や婦人科がんの悪化についても注意喚起がされており、血栓症に対しては内服薬よりも貼付薬を優先することで、また悪性疾患については不正出血や婦人科超音波検査で怪しい所見があればそちらの精査を進めることで安全性は担保できると考えます。

更年期障害は治るの?

はい、治ります。ただし、数年~10年と長い期間が必要になる場合があります。必ずしも薬物療法が必要なわけではなく、更年期女性を取り巻くもろもろの事情に対して周囲や家族に理解してもらうことも大切です。一般的に更年期は、自身の老いを感じたり、子供の巣立ちの時期であったり、配偶者やパートナーも健康問題をかかえやすく、親の介護や死なども経験する時期です。社会的には職場での責任が大きくなったり、人間関係にも疲弊しやすく、心理社会的な要素が決して無視できない環境にあるといえます。自身の力ではどうにもできないことが多く、辟易としてしまいますが、自身でコントロールできることに集中して生活習慣を改善していくことをお勧めします。具体的には週150分の有酸素運動や、バランスのとれた食事(適切なタンパク質の摂取、糖質摂取量の見直しなど)、マインドフルネス(瞑想)などを推奨しています。これまでがむしゃらに仕事や家事育児をされてこられ、ご自身のメンテナンスをされてこなかった方が多いと思います。1日や1週間という単位で、少しでもご自身の時間を確保することを第一優先とされてみてはいかがでしょうか。

こんなときは受診を

更年期障害は生活の質はおとすものの命に別状はありません。一方で注意が必要な症状として下記があげられます。

・抑うつ症状が強く、①興味の喪失②わけもなく悲しくなってしまう、など気分の問題が続く。

・自分自身を傷つけたり、自殺について考えたり、その準備を検討するような状況。

気分の問題が大きい場合は精神科と連携して治療を行うこともあります。このような状況では配偶者やパートナーの方同伴での受診をお勧めします。

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