- 9月 4, 2025
りんご病(伝染性紅斑)とは?症状・感染経路・治療法を詳しく解説

お子さんのほっぺや腕や足が突然真っ赤になって驚いた経験はありませんか?それは「りんご病」かもしれません。正式には「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」と呼ばれるこの感染症は、主に春から夏にかけて流行する子どもの病気です。2024年から2025年にかけて警報レベルの流行となっています。
また、りんご病は妊娠初期に感染すると、赤ちゃんにも悪影響を及ぼし、最悪流産となる恐ろしい感染症です。
りんご病の症状から治療法、予防対策まで、保護者の皆さんが知っておくべき大切な情報をわかりやすくお伝えします。正しい知識を身につけて、お子さんの健康を守りましょう。
りんご病(伝染性紅斑)とは何か?
りんご病は、ヒトパルボウイルスB19というウイルスによって引き起こされる感染症です。パルボウイルスは非常に小さなウイルスで、主にくしゃみや咳といった飛沫感染(ひまつかんせん)によって人から人へと広がります。
この病気の最大の特徴は、ほっぺが赤くなることです。まるでりんごのように真っ赤になることから「りんご病」という親しみやすい名前で呼ばれています。医学的には「伝染性紅斑」が正式名称です。
主に4歳から12歳の子どもがかかりやすく、特に保育園や小学校で集団発生することがあります。一度かかると生涯免疫を獲得するため、同じ人が再び感染することはほとんどありません。
【りんご病の症状と経過】特徴的な赤い発疹はいつ現れる?
初期症状(感染から1-2週間)
りんご病の症状は段階的に現れます。最初の1-2週間は「潜伏期間」と呼ばれ、この時期には特別な症状は見られません。お子さんは元気に過ごしているため、感染していることに気づかない場合がほとんどです。
実は、この時期が最も感染力が強い期間です。ウイルスが体内で増殖し、咳やくしゃみを通じて他の人にうつりやすくなっています。しかし、頬の赤みなどは認めないため、早期に伝染性紅斑と診断することは極めて難しいのが現実です。
前駆症状(2-3週間目)
感染から2-3週間経つと、軽い風邪のような症状が現れることがあります。微熱、軽い咳、鼻水、のどの痛みなどです。しかし、これらの症状は必ず現れるわけではなく、全く症状が出ない子どももいます。
この時期になると、実は感染力はかなり弱くなっています。多くの保護者が驚かれるのですが、特徴的な赤い発疹が出る頃には、もうほとんど他の人にうつす心配はありません。
発疹期(3-4週間目)
感染から3-4週間経って初めて、りんご病の特徴的な症状である赤い発疹が現れます。最初に両頬が真っ赤になり、まるでりんごのような色になります。これが病名の由来です。
その後、腕や太ももに網目状やレース状の発疹が広がります。この発疹は「網状紅斑(もうじょうこうはん)」と呼ばれ、りんご病に特徴的な症状です。
発疹は通常1-2週間で自然に消えますが、入浴後や運動後、日光に当たった後などに一時的に濃くなることがあります。これは正常な経過なので心配する必要はありません。
成人の症状
大人がりんご病にかかると、子どもとは異なる症状が現れることがあります。特に関節痛が強く出ることが多く、手首、膝、足首などの関節が痛くなります。子どものような網状紅斑は認めないことが多く、診断が難しくなります。確認のためには採血検査が有効ですが、結果には1週間ほど要します。
女性の方が男性よりも症状が強く出る傾向があり、関節痛が数週間から数か月続く場合もあります。発疹は子どもほど目立たないことが多いです。
【りんご病の感染経路と予防法】いつまで注意が必要?
感染経路について
りんご病は主に飛沫感染によって広がります。感染した人の咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸い込むことで感染します。接触感染(手についたウイルスが口や鼻から入る)の可能性もありますが、飛沫感染の方が主要な感染経路です。
ウイルスは非常に安定しており、環境中でも長時間生存できます。そのため、感染者が触った物を介して感染することもあります。
感染力が強い時期
多くの人が誤解していますが、りんご病の感染力が最も強いのは、特徴的な赤い発疹が出る前の段階です。潜伏期間から前駆症状の時期、つまり感染から2-3週間の間が最も注意が必要な時期です。
赤い発疹が現れた時には、すでに感染力はほとんどありません。そのため、発疹が出てから慌てて学校や保育園を休む必要はありません。
効果的な予防法
残念ながら、りんご病にはワクチンがありません。そのため、一般的な感染予防対策が重要になります。
手洗いとうがいを徹底しましょう。特に外出後、食事前、トイレの後は必ず手を洗ってください。アルコール系の手指消毒薬も効果的です。
咳エチケットも大切です。咳やくしゃみをする時は、ティッシュや袖で口と鼻を覆いましょう。マスクの着用も飛沫感染の予防に役立ちます。
室内の換気を心がけ、人が多く集まる場所では特に注意が必要です。体調が悪い時は無理をしないで休むことも、感染拡大を防ぐ重要な対策です。
登園・登校の判断
文部科学省の学校保健安全法では、りんご病は「その他の感染症」に分類されています。発疹が現れた時点では感染力がほとんどないため、全身状態が良ければ登園・登校は可能です。
ただし、発熱がある場合や体調が悪い場合は、りんご病以外の病気の可能性もあるため、医師の診断を受けてから判断しましょう。
【りんご病の治療と注意点】妊婦さんへの影響は?
治療法について
りんご病に対する特効薬はありません。ウイルス感染症のため、抗生物質(細菌をやっつける薬)は効果がありません。治療は症状を和らげる「対症療法(たいしょうりょうほう)」が中心になります。
発熱がある場合は、解熱剤を使用することがあります。ただし、15歳未満の子どもにはアスピリンという解熱剤は使用できません。アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの安全な解熱剤を使用します。
発疹によるかゆみがある場合は、かゆみ止めの内服薬や外用薬を塗ることがあります。しかし、多くの場合はかゆみはそれほど強くありません。
大人の場合、関節痛が強い時は痛み止めを使用することもあります。症状が長引く場合は、医師と相談しながら治療を進めます。
日常生活での注意点
発疹が出ている間は、強い日光を避けた方が良いでしょう。紫外線によって発疹が濃くなることがあるためです。外出時は帽子や長袖を着用し、日焼け止めクリームを使用しましょう。
入浴は問題ありませんが、熱いお湯は発疹を濃くする可能性があります。ぬるめのお湯でさっと済ませるようにしましょう。
激しい運動も発疹を濃くする原因になります。体調が良くても、発疹が消えるまでは激しい運動は控えめにしましょう。
十分な休息と栄養バランスの良い食事を心がけ、体の回復をサポートしてください。水分補給も忘れずに行いましょう。
妊婦さんへの深刻な影響
妊婦さんがりんご病にかかると、お腹の赤ちゃんに深刻な影響を与える可能性があります。特に妊娠20週未満の感染は注意が必要です。妊婦さんが感染した場合、約4%で流産になることがあります。
ウイルスが胎盤を通過して胎児に感染すると、「胎児水腫(たいじすいしゅ)」という状態になることがあります。これは胎児の体に水がたまる深刻な状態で、最悪の場合は流産の原因になります。
妊娠中の女性は、りんご病が流行している時期は特に注意が必要です。人混みを避け、手洗いうがいを徹底し、体調不良の人との接触を避けましょう。
家族にりんご病の患者がいる場合は、産婦人科医に相談してください。血液検査でウイルス感染の有無を調べることができます。
妊娠を希望している女性は、妊娠前に血液検査で免疫があるかどうかを確認しておくことをお勧めします。免疫がない場合は、妊娠中の感染予防により一層注意を払う必要があります。
合併症について
健康な子どもの場合、りんご病で深刻な合併症が起こることはまれです。しかし、免疫力が低下している子どもや、特定の血液疾患がある子どもでは注意が必要です。
鎌状赤血球症(かまじょうせっけっきゅうしょう)や球状赤血球症などの溶血性貧血がある子どもでは、一時的に重篤な貧血が起こることがあります。これを「無形成クリーゼ」と呼びます。
このような基礎疾患がある子どもは、りんご病の症状が現れたら早めに医師に相談してください。定期的な血液検査が必要になる場合があります。
まとめ
りんご病は多くの場合、軽症で済む感染症です。特徴的な赤い発疹で診断がつきやすく、発疹が出る頃には感染力もほとんどありません。
最も大切なのは、正しい知識を持つことです。感染力が強いのは発疹が出る前の時期であること、妊婦さんには注意が必要であることを理解しておきましょう。
予防には手洗い、うがい、咳エチケットが基本です。お子さんの体調変化に注意を払い、気になることがあれば早めに医師に相談してください。
小児感染症専門医として、保護者の皆さんには冷静に対応していただきたいと思います。適切な知識と対策で、お子さんの健康をしっかりと守ってくださいね。