• 11月 18, 2023
  • 8月 6, 2024

月経困難症

生理痛が強いです。受診したほうがいいでしょうか?

 市販の痛み止めで日常生活に支障が出ないレベルまで痛みが改善する場合、受診までは必要ありません。しかし、生理痛の原因として子宮筋腫や子宮内膜症が関与していることも多く、これらは将来的に妊娠の妨げになったり、手術する必要がでてきたり、場合によっては悪性化するものも含まれています。生理痛の原因について評価を受けていない方は、超音波検査などの婦人科的な評価を一度は受けられることをおすすめします。超音波検査は経腟的に行うことが一般的ですが、性交歴のない方や内診に強い抵抗を感じられる場合は、おなかからの超音波検査でもある程度の評価が可能です。

痛み止めが十分効きません、どんな治療法がありますか?

 痛み止めの服用でも鎮痛効果が不十分な場合や、早急に効果的な治療を希望される場合はホルモン治療をおすすめします。低用量ピルの内服によって生理痛や出血量はかなり軽減することが期待できます。生理痛の原因が大きな子宮筋腫や内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)などの腫瘍性病変の場合は、治療効果が十分得られないケースもあります。低用量ピルは持病などによって使用できない方もいます。例えば次のような場合は使用ができません。

低用量ピルが使用できない方(一例)

・前兆を伴う片頭痛

・35歳以上の喫煙者の方

・血栓症の既往

・高血圧のある方

・産後間もない方、授乳中で乳児の月齢の小さい方

・乳がんの既往のある方 など。

 他にも使用上注意が必要な疾患が多数あり、服用に際して問診票などを用いて使用の可否をチェックします。低用量ピルが使用できない場合は、プロゲスチン製剤を用いたり、閉経が近いと予想される場合はGnRH製剤なども使用します。

ホルモン治療の種類について

・低用量ピル

 2種類の女性ホルモンを含有しており、成分としては経口避妊薬とほぼ同等といえます。国内で使用できる薬剤は以下です。

・ルナベルLD/ULD(後発:フリウェルLD/ULD)

・ヤーズ配合錠(後発:ドロエチ)

・ジェミーナ

 国内では月経困難症に対して保険適応で処方されるものもLEP(レップ)、避妊目的で自費で処方されるものをOC(オーシー)と呼びます。使用目的は異なりますが、どちらも月経困難症の緩和と避妊効果をもっています。

 服薬方法は21日服用し7日休薬するもの、24日内服し4日偽薬を使用するものなど、種類によってかわります。休薬中に月経のような出血がおこりますが、月経を一定期間起こさずに連続内服することで月経前後の煩わしい症状を回避するお薬もあります。ヤーズフレックス(120日まで)やジェミーナ(77日まで)がこれに該当します。

 低用量ピルのヤーズ配合錠は月経前症候群(PMS)にも有効であることが知られており月経前後に抑うつやイライラといった症状を伴う場合はこれらを優先的に使用します。低用量ピルだけで改善しない症状がある場合は漢方薬の併用をすることもあります。40歳未満の方では第一選択となるお薬です。

 低用量ピルの主な副作用として以下の症状があります。

・不正出血

・むくみ

・頭痛

・胸の張り など

 稀で重大な副作用に血栓塞栓症があります。1万人の女性を1年間観察した場合、血栓症が自然発生するのは2-4人ですが、LEPの使用により5-6人に増加することが統計的にわかっています。2倍近い増加ですが、全体に占める割合はわずかです。40歳以上や肥満・喫煙・生活習慣病などがある場合は血栓症の発症率が高くなることが知られています。

・プロゲスチン製剤

 低用量ピルが使用できない場合や、14歳未満など若年の方、GnRH製剤の導入前などに使用します。低用量ピルがエストロゲンとプロゲスチンの合剤であるのに対して、こちらはプロゲスチン単剤です。多くの場合、「ジエノゲスト」が内服薬として用いられています。エストロゲンとの合剤のほうが不正出血は少なく月経のコントロールにむいているのですが、エストロゲンは血栓症に関与するため、血栓症発症のリスクが高い場合(生活習慣病、高度肥満、喫煙、40歳以上など)はプロゲスチン単剤を選択します。プロゲスチンは月経周期は保たれたままか、または失われ、しばしば不正出血が問題となるお薬です。1日2回の服用を続けるだけなので、低用量ピルのような周期投与管理を必要としない点では、使用しやすいお薬といえます。

・ミレーナ(子宮内システム)

 また、生理痛や過多月経が問題で当分は妊娠を希望されない場合、避妊具のように子宮内に挿入する「ミレーナ」というプロゲスチン製剤もあります。子宮への挿入は数分で済み、5年間有効のため、内服薬のような飲み忘れも問題にならず、コストパフォーマンスにも優れています。

・GnRH製剤

 LEPやプロゲスチンが使用できなかったり、十分な効果が得られない場合に選択されます。偽閉経療法とも呼ばれ、体内のホルモンを閉経状態とするため月経がとまります。特に過多月経を認める場合の止血効果は強く、更年期において他のホルモン製剤でコントロールがつかない場合は、薬物的な保存的治療として最後の一手といえます。注射製剤の「リュープリン」と、内服薬の「レルミナ」がありますが、注射の必要がないことや通院回数が少なく済むことから、レルミナが好んで選択されます。副作用として更年期症状のような、のぼせ・ほてりが出やすいため、すでにこられの症状を経験されている方にはあまりむかないといえます。また、骨密度が減少することも知られ、1回の服薬は6か月以内が推奨されています。一度6か月使用した場合はいったん終了としますが、その時点で閉経を迎えていない場合は他の治療法を挟んだのちに再度GnRH療法を行う場合もあります。定期的に骨密度を検査しながらの治療継続が推奨されています。また、他の薬剤と比較すると薬価が高いことがネックとなります。レルミナの場合、3割負担の方でお薬代だけて月額7700円(2024年)ほどかかります。

処方だけの受け取りや、3か月より多く処方はもらえますか?

 非対面の処方は医師法で禁止されています。また、保険診療で認められている処方は最大3か月となります。3か月処方ができるかどうかは服薬期間や症状に応じて医師が判断をします。経口避妊薬(OC)は類似の月経緩和作用をもちますが、自費診療ですので処方の日数に上限はありません。

ピルを使用中です。定期的に検査を受ける必要がありますか?

 ピルの服用の有無にかかわらず、2年に1度の子宮がん検診が推奨されています。必要に応じてクラミジア検査や採血検査などが行われることがあります。必ずしも定期的な採血検査が必要なわけではありませんが、これらは年齢や生活習慣、持病の有無や主治医の考え方によっても変わります。

月経前症候群(PMS)はピルで治せますか?

 月経の時期とほぼ一致して出現する頭痛や肩こりなどの身体症状やイライラや抑うつなどの精神症状をPMSと呼びます。特に精神症状が重たいものはPMDDと呼ばれます。ヤーズ配合錠(後発品:ドロエチ)・ヤーズフレックスにPMSの緩和作用が報告されています。月経困難症のある方はこれらを使用することでPMS症状も緩和できる可能性があります。低用量ピルで症状の十分な緩和が得られない場合は、漢方薬や抗うつ薬(SSRI)を併用することでより症状の緩和が得られる場合があります。

薬以外で症状を改善させる方法はありますか?

 規則正しい運動はある程度有効と考えられています。有酸素運動や筋肉トレーニングもよいでしょう。瞑想(マインドフルネス)や一部のビタミン、月経前症候群の方では症状の記録も症状の客観的把握に有効と考えられています。

こんな時は受診を

・生理痛のため学業や仕事・家事など日常生活への支障が大きい。

・貧血を指摘された。

・月経量が多く、日中でも夜用ナプキンを使用したり、2-3時間で交換が必要になる。

・PMS症状で知人やパートナー、社会的な面で問題を感じている。

・月経を旅行や受験にぶつけたくない、ずらしたい。

 現代人は妊娠年齢が遅く、出産回数も少ないため、生涯の月経回数が昔に比べて多いことが指摘されています。月経は我慢するもの、つきあっていくもの、という考えに縛られていないでしょうか。低用量ピルなどのホルモン剤の長期使用は健康や妊娠しやすさに影響を与えないことが明らかになっています。

月経のために犠牲になっている日数は年間で何日に上りますか?

それは生涯で何年間に相当しますか?

月経をコントロールすることで自分らしい生活を取り戻してみませんか。

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