- 3月 30, 2024
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病とは?
妊娠に伴って赤ちゃんに必要な血糖を運ぶために、お母さん自身は血糖を体内に吸収しにくくなります。この作用は胎盤が担っていますが、結果としてお母さんの血糖値があがりすぎてしまうと母児ともに様々な健康上のデメリットが生じてきます。
リスク要因
妊娠糖尿病のリスク要因には、
- 妊娠前からの肥満
- 妊娠後の過剰な体重増加
- 家族の糖尿病(特に妊婦の母親)
- 35歳以上の年齢
- 過去に妊娠糖尿病の診断を受けている
などが含まれます。これらの要因を理解することは、リスクを早期に識別し、適切な予防策を講じるために重要です。
妊娠糖尿病の検査
妊娠糖尿病の検査は、妊娠24週から28週にかけて行われることが日本産科婦人科学会より推奨されています。この検査では、血糖値を測定し、妊娠糖尿病の有無を診断します。検査方法として、50gまたは75gのブドウ糖を含んだソーダを服用して一定時間後に血糖値の採血を行う経口ブドウ糖耐性試験(OGTT)があります。この試験を通じて、体のブドウ糖処理能力を評価します。検査にあたって以下の事項が重要となります。
- 来院時に甘いソーダをお渡しします。ソーダを飲んで1時間後に採血を行います。採血までの待ち時間で妊婦健診を行います。
- 甘みの強いソーダのため、腹満感や嘔気、稀に嘔吐が起きることがあります。嘔吐した場合は後日再検査を行うか、随時血糖値で代用します。
- 炭水化物や糖類を含んだ飲料で血糖値が高く出てしまうため、食事は軽めに済ませ、検査開始までに食後2時間以上経過している必要があります。
予防と管理
妊娠中の適度な運動とバランスの取れた食生活は、妊娠糖尿病の予防と管理に非常に重要です。特に、散歩や水泳などの有酸素運動と、炭水化物の摂取をやや控えめにし、タンパク質をしっかりとる食生活が推奨されます。これらの生活習慣の調整は、血糖値を安定させるのに役立ちます。また、1日3度の食事から6回程度の分割食とする方法も血糖管理の一貫として医師より指示される場合もあります。
具体的な食事計画の例
妊娠糖尿病の管理には、バランスの取れた食事が不可欠です。例えば、
- 朝食に全粒粉のパン、卵、新鮮な果物
- 昼食には鶏肉や魚にサラダ
- 夕食には豆腐や野菜をたっぷり使った料理
間食にはナッツやゆで卵、ヨーグルトが適しています。オリゴ糖は甘味を感じますが吸収されないため、砂糖の代用に適しています。これらの食事は、血糖値の急激な上昇を避けるのに役立ちます。妊娠の影響で食事が十分取れない場合に、タンパク質摂取の方法としてプロテイン飲料が考えられます。しかし、妊娠中のプロテイン飲用が母児にどのような影響を与えるかはよくわかっていません。プロテイン飲用の原料は牛乳や大豆であり、これらは妊娠中に安全に摂取できることから、食事の補助として飲用する程度であれば問題ないと考えます。
運動プログラム
妊娠中でも安全に行える運動には、散歩、水泳、妊婦向けヨガがあります。週に数回、30分程度の運動を心がけることが推奨されますが、運動前には医師と相談し、自分に合った運動強度を見つけることが大切です。多くの場合、妊娠中であっても運動は妊婦や胎児に悪影響を与えず実施することが可能であることが妊婦を対象として調査研究からわかっています。
妊娠糖尿病の影響
妊娠糖尿病は、母体と胎児の両方に影響を及ぼす可能性があります。血糖のコントロールが不十分な場合、帝王切開のリスクが高まるほか、早産、胎児の過大成長、出産時の合併症など、母子ともに健康上のリスクが増加します。
治療方法
妊娠糖尿病の治療には、主に食事療法、運動療法、自己血糖測定が含まれます。場合によっては、インスリン治療が必要となることもあります。これらの治療法は、血糖値を正常範囲内に保つことを目的としています。
妊娠糖尿病の長期的な影響
妊娠糖尿病は、出産後に血糖値が正常に戻ることが多いですが、将来的に2型糖尿病を発症するリスクが高まるとされています。また、妊娠糖尿病を経験した女性の子どもも、将来的に肥満や2型糖尿病のリスクが高まる可能性があります。これらのリスクを管理するためには、定期的な健康診断と健康的な生活習慣が重要です。