• 5月 26, 2025

出生前診断とは?妊娠中に受けられる検査の種類と特徴を産婦人科専門医が詳しく解説

妊娠中の多くの方が気になる「出生前診断」。 赤ちゃんの健康状態を事前に知ることができる検査として注目されていますが、 「どんな検査があるの?」「費用はどのくらい?」「検査を受けるべき?」 といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

出生前診断の基本的な知識から、 各検査の特徴、注意点まで、わかりやすく解説いたします。 正しい知識を身につけて、ご自分にとって最適な選択をしていただければと思います。

【出生前診断の基本知識】検査でわかることと種類について

出生前診断とは、お腹の中の赤ちゃんの染色体に異常がないかを 妊娠中に調べることができる検査のことです。 染色体とは、遺伝情報が詰まった細胞の中の構造物で、 通常は決まった数と形を持っています。

代表的な出生前診断には、以下の3つの検査があります。

1. NIPT(新型出生前検査) 血液検査だけで調べられる比較的新しい検査方法です。

2. クアトロテスト こちらも血液検査で行う、従来からある検査方法です。
 当院での詳細はHPをご参照ください。

3. 羊水検査 お腹に針を刺して羊水を採取する、より詳しい検査方法です。

これらの検査は「非確定的検査」と「確定的検査」の2つに分けられます。 NIPTとクアトロテストは非確定的検査で、 赤ちゃんに異常がある「可能性」を調べる間接的な検査です。

一方、羊水検査は確定的検査と呼ばれ、 赤ちゃんの染色体を直接調べることで、 異常があれば診断を確定することができます。

重要なのは、非確定的検査で異常の可能性が指摘されても、 必ずしも赤ちゃんに異常があるわけではないということです。 逆に、検査で異常が見つからなくても、 染色体異常以外の病気がないことを保証するものでもありません。

【各検査の詳細と費用】NIPT・クアトロテスト・羊水検査の特徴

NIPT(新型出生前検査)について

NIPTは「Non-Invasive Prenatal Testing」の略で、 日本語では「非侵襲的出生前遺伝学的検査」と呼ばれます。 妊婦さんの血液中に混じっている赤ちゃん由来のDNAを分析して、 染色体の数の異常を調べる検査です。

検査可能な時期: 妊娠9週から18週頃まで
調べられる異常: 21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミー
費用: 約10万円前後(自由診療のため医療機関により異なります)

NIPTの最大の特徴は、その高い精度です。 異常があるケースを正しく見つけ出す確率(感度)と、 異常がないケースを正しく判定する確率(特異度)が ともに99%以上と非常に高くなっています。

ただし、NIPTはあくまでスクリーニング検査(ふるい分け検査)であり、 確定診断ではありません。 陽性と判定された場合は、羊水検査などの確定的検査を受けて、 最終的な診断を行うことが一般的です。

また、検査で陰性と判定されても、 検査対象以外の染色体異常や遺伝性疾患の可能性を 完全に否定することはできません。 赤ちゃんの体の構造的な異常(奇形など)も検出できないのです。

NIPTを受ける際は、事前に十分な遺伝カウンセリングを受けることが重要です。 検査の目的や方法、結果の解釈、限界について 専門家から詳しい説明を受けて理解を深めておきましょう。

クアトロテストについて

クアトロテストは、妊娠15週以降に行われる母体血清マーカー検査です。 お母さんの血液中にある4つの物質 (AFP、hCG、uE3、インヒビンA)の濃度を測定することで、 赤ちゃんの異常の可能性を調べます。

検査可能な時期: 妊娠15週以降
調べられる異常: ダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、開放性神経管奇形
費用: 約2〜3万円 当院での詳細はHPをご参照ください。

クアトロテストの大きなメリットは、費用の安さです。 NIPTの約3分の1の費用で検査を受けることができます。

陰性的中率(結果が陰性だった場合に、本当に赤ちゃんに異常がない確率)は 99%と高く、NIPTと遜色ありません。 つまり、検査結果が陰性であれば、 赤ちゃんが染色体異常である可能性は非常に低いと言えます。

ただし、クアトロテストの弱点は陽性的中率の低さです。 陽性的中率とは、結果が陽性だった場合に 本当に赤ちゃんに異常がある確率のことですが、 この確率は高くありません。

そのため、陽性結果が出ても実際に異常である可能性は低く、 多くの場合は心配のいらない「偽陽性」となります。 陽性結果が出た場合は、確定診断のために 羊水検査などの追加検査が必要になります。

羊水検査について

羊水検査は、妊娠16週以降に実施可能になる確定的検査です。 赤ちゃんの染色体の数や形に異常がないかを調べたり、 一部の遺伝病の有無を診断したりすることができます。

通常、発育に問題のない妊娠でいきなり羊水検査を提案されることは稀で、 NIPTやクアトロテストで陽性となった場合の 確定検査として実施されることがほとんどです。

検査方法: お腹の上から局所麻酔をした後、 超音波検査で確認しながら細い針をお腹から子宮内まで刺し、 羊水を採取します。 採取した羊水の中には赤ちゃんの細胞が含まれているため、 染色体などを詳しく調べることができます。

結果がわかる時期: 検査から2〜4週間後
合併症のリスク: 感染や破水に伴う流産のリスクが0.1〜0.5%

羊水検査は確定的検査ではありますが、 すべての病気や障害を調べられるわけではありません。 また、わずかながら流産のリスクがあるため、 検査の必要性が高いと判断された場合にのみ実施されます。

【検査を受ける前に考えておきたいこと】選択の基準と注意点

検査を受けるかどうかの判断基準

出生前診断を受けるかどうかは、 妊婦さんとそのパートナーが医師から十分な説明を受けた上で、 ご自身で決めることが最も大切です。

検査を検討する際のポイントをいくつかご紹介します。

1. 年齢によるリスクの違い 染色体異常のリスクは、お母さんの年齢が上がるにつれて高くなります。 35歳以上の妊娠では、医師から出生前診断について 説明を受けることが多くなります。

2. 家族歴や過去の妊娠歴 染色体異常のお子さんを妊娠・出産したことがある場合や、 家族に遺伝性疾患の方がいる場合は、 検査について相談することをお勧めします。

3. 心理的な負担の考慮 検査結果によっては、妊娠期間中に強い不安や ストレスを感じる可能性があります。 検査を受けることで安心できる場合もあれば、 逆に心配が増す場合もあります。

倫理的な側面について

出生前診断には、医学的な側面だけでなく、 倫理的な問題も含まれていることを理解しておく必要があります。

検査で異常が見つかった場合、人工妊娠中絶が選択される傾向にあります。 法的には胎児の異常を理由とした中絶は認められていませんが、 実際には多くの医療機関で希望による中絶が行われているのが現状です。

この技術とその結果にどう向き合うかについて、 十分な社会的議論が追いついていないという指摘もあります。 中絶に対する考え方は、文化や宗教的背景によって大きく異なり、 各国で法的な扱いも様々です。

検査後のサポート体制

検査を受ける際は、結果が出た後のサポート体制も確認しておきましょう。 特に以下の点が重要です。

1. 遺伝カウンセリングの充実度 検査前の説明だけでなく、結果が出た後の カウンセリング体制が整っているかを確認しましょう。

2. 陽性結果が出た場合のフォロー体制 確定検査への案内や、その後の選択肢について 十分な説明とサポートが受けられるかが重要です。

3. 医療機関の選択 検査のみを行って事前説明や結果後のフォローが 不十分な医療機関もあるため、注意が必要です。

まとめ

出生前診断は、妊娠中の不安を和らげたり、 赤ちゃんの健康状態を事前に把握したりするのに役立つ検査です。 しかし、検査にはそれぞれメリットとデメリットがあり、 100%確実な検査は存在しません。

検査を受けるかどうかは、医学的な側面だけでなく、 ご家族の価値観や人生観も含めて検討する必要があります。 十分な情報収集と専門家との相談を通じて、 ご自身にとって最適な選択をしていただくことが大切です。

妊娠中の不安や疑問は、遠慮なく担当医師に相談してください。 一人ひとりの状況に応じて、最適な検査方法や タイミングをご提案させていただきます。

赤ちゃんとお母さんの健康を第一に考え、 妊娠期間を安心して過ごしていただけるよう、 私たち医療従事者も全力でサポートいたします。

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