- 4月 20, 2024
- 7月 1, 2024
出生前検査
検査の種類について
出生前検査は、生まれる前の赤ちゃんの染色体のトラブルを事前に調べることができる検査です。代表的な出生前検査として以下の3つがあります。
- NIPT(非侵襲的出生前遺伝学的検査)
- クアトロテスト(当院で実施可)
- 羊水検査
NIPTとクアトロテストは赤ちゃんが染色体などの異常を抱えている「可能性」が高いかどうかを見積もるだけの間接的な検査で、非確定的検査と呼ばれています。羊水検査は直接胎児の染色体を直接調べることができるため、異常がみつかれば診断が確定するため確定的検査と呼ばれています。非確定的検査でひっかかったからといって必ずしも赤ちゃんに異常があるということの証明にならないという点で注意が必要です。逆に、異常がなかったからといってそれが「染色体異常以外も含めた、何も異常がないこと」の保証にならないとも言えます。
NIPT(non-invasive prenatal testing=新型出生前検査)
NIPTは、妊婦さんの血液を採取し、そこに含まれる赤ちゃん由来のDNAを分析することで、染色体の数的異常(21トリソミー、18トリソミー、13トリソミー)を調べる検査です。この検査は、妊娠9週以降から、18週頃までに受けることができます(当院では実施しておりません)。
NIPTの大きな特徴は、その高い精度にあります。異常があるケースを正しく見つけ出す確率(感度)と、異常がないケースを正しく判定する確率(特異度)がともに99%以上と非常に高いのです。ただし、NIPTはあくまでもスクリーニング検査であり、確定診断ではありません。検査で陽性と判定された場合は、羊水検査や絨毛検査などの侵襲的検査を受けて、確定診断を行うことが一般的です。費用は自由診療のため医療機関によりまちまちですが、10万前後のところが多いようです。
一方、NIPTで陰性と判定された場合でも、検査対象以外の染色体異常や遺伝性疾患の可能性を完全に否定することはできません。また、赤ちゃんの奇形など体の構造的な異常は検出できないのです。
NIPTを受ける際は、事前に十分な遺伝カウンセリングを受けることが大切です(検査のみ行って事前説明や陽性となった場合のフォローがないところもあり、注意が必要です)。検査を受ける前に、検査の目的、方法、結果の解釈、限界などについて、専門家から詳しい説明を受け、理解を深めておきましょう。また、多胎妊娠や母体の染色体異常、輸血歴などがある場合は、検査結果に影響する可能性があり、検査の対象とならない場合もあります。
クアトロテストについて
クアトロテストとは、妊娠15週以降に行われる母体血清マーカー検査の一つです。この検査では、母体の血液中にある4つの物質(AFP、hCG、uE3、インヒビンA)の濃度を測定することで、主にダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、開放性神経管奇形のチェックを目的としています(当院で実施可能)。
クアトロテストはNIPT同様に母体採血だけで実施可能です。検査の陰性的中率(結果が陰性だった場合に、本当に赤ちゃんに異常がない確率)は99%と高く、NIPTと遜色ないといえます。つまり、検査結果が陰性であれば、胎児が染色体異常である可能性は非常に低いと言えるためNIPTと比較するとコストパフォーマンスが優れているといえます。費用は2-3万のところが多いようです。当院での詳細はHPをご参照ください。
ただし、クアトロテストは陽性的中率(結果が陽性だった場合に、赤ちゃんに本当に異常がある確率)が低いため、陽性結果が出ても、実際に胎児が染色体異常である確率は高くなく、ほとんど参考にならないともいえます。陽性結果が出た場合、確定診断のために羊水検査や絨毛検査などの侵襲的検査を行うことが一般的です。
羊水検査について
妊娠16週以降になると、羊水が増えてくるため羊水検査が実施可能になります。羊水検査は、赤ちゃんの染色体の数や形に異常がないかを調べたり、一部の遺伝病の有無を診断したりするための重要な検査です。発育経過に問題のないケースでいきなり羊水検査を提案されることは稀ですが、クアトロテストやNIPTで陽性となった場合の確定検査として実施される場合がほとんどです。染色体検査目的とは別に、子宮内感染症を疑われる場合にも実施されることがあります。
検査は、おなかの上から局所麻酔をした後、超音波検査で見守りながら細長い針をお腹から刺して子宮内まで進め、羊水を採取します。採取した羊水の中には赤ちゃんの細胞が含まれているので、赤ちゃんの染色体などを詳しく調べることができます。検査結果は2~4週間ほどで分かります。
検査の合併症として感染や破水などに伴う流産のリスク(0.1~0.5%)があることも知っておく必要があります。そのため、他の検査で赤ちゃんの異常が疑われる場合など、検査の必要性が高いと判断された場合に実施されます。また、羊水検査では全ての病気や障害を調べられるわけではありません。検査結果の解釈には注意が必要で、疑問点があれば遠慮なく医師に相談しましょう。
まとめ
これらの出生前検査を受けるかどうかは、妊婦さんとそのパートナーが、医師から十分な説明を受けた上で自ら決めることが大切です。これらの検査は異常が見つかった場合に中絶を選択されやすいという実態を考慮すると、倫理的な問題を孕んでいることも指摘されています。本来は胎児の異常を理由に中絶することは法的には認められていませんが、多くの施設で希望による中絶は受け入れられています。生まれてくる赤ちゃんのことを事前に詳しく知るために開発された技術ですが、この技術とその結果にどう向き合っていくかの倫理的な議論がおいついていないといえます。中絶については女性の権利として認めている国と、違法とする国とがあり、文化圏や背景となる宗教によって解釈は様々です。近年では米国の一部の州で中絶が違法となり、多くの問題を呼ぶようになりました。
当院では、妊婦さんの不安に寄り添いながら、一人ひとりに合った出生前検査の方法をご提案しています。赤ちゃんの健康に少しでも不安のある方は、ぜひ遠慮なくご相談ください。