家庭医とは
家庭医、あるいは総合診療医とは、あなたとあなたの家族・地域を全体的にケアするかかりつけ医のことを指します。眼科や循環器内科、小児科などの専門医と異なり、家庭医は年齢や臓器による区分なしに、日常的な多岐にわたる健康問題の診療を一手に担うことが可能です。
従来、医療は臓器や性別によって様々な専門医に分類されてきました。しかし、医学の進歩に伴い医療が細分化される一方で、専門医が自分の領域だけを診るため、全体としての整合性やバランスが失われることが問題となっていました。特に高齢者のケアではこの問題が顕著です。
海外で一般的な家庭医(Family physician)は、この課題への対応として位置づけられ、国内では「総合診療医」という呼称で、2018年に19番目の専門医として国に認定されました。
家庭医の役割は、クリニックのかかりつけ医や訪問診療医としての外来中心の医師から、病院で入院患者を中心に診療する病院中心の医師に至るまで、医療機関の種類によって異なります。
このような背景から、全体を一貫して診ることができる家庭医の重要性が再認識され、その役割が高まっています。クリニックでの家庭医(総合診療医)による日常的な診療が可能な問題の一部を、下記にご紹介しております。
- こどもの風邪、インフルエンザ、胃腸炎などの一般的な感染症
- ニキビ、湿疹、蕁麻疹、イボなどの皮膚の問題
- 予防接種、子供・大人の健康診断
- 大人の風邪、肺炎などの一般的な感染症
- 花粉症、アレルギー
- 動機、息切れ、頭痛、腹痛などの内科的疾患
- 喫煙、アルコールの問題
- 膀胱炎、尿漏れ、陰部のトラブル
- 月経の問題、避妊、緊急避妊、妊婦健診
- 妊娠・授乳中の処方の相談
- 更年期障害
- 性感染症の診断、予防、治療
- 子宮筋腫、卵巣腫瘍などの女性に特異的な問題
- 抑うつ、不眠
- 糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病
- 倦怠感、疲労感など診断のつきにくい症状の相談
- がん患者のターミナルケア 看取り
- 高齢者のケア
- 数か月おきの高次医療機関の合間の相談(連携)
- 訪問診療 など
※診療方針は、各専門医も参考にしている疾患ごとのガイドラインや、医学論文などを参考にするEBM(Evidence based medicine)が基本的なスタイルになります。医学的な妥当性のみを押し付けず、あなたの価値観を尊重した診療方針を提案できるよう心がけていきます。
家庭医は他国では一般的です
米国や英国などの先進国では、家庭医が一般的であり、「かかりつけ医制度」が存在します。日本と異なり、受診先となる医療機関を自由に選べるわけではありません。保険会社を通じて地域の家庭医と契約し、受診の際はまずその家庭医を受診するシステムです。やや不便に感じるかもしれませんが、この制度によって医療資源の適切な配分や医療費の抑制に寄与しています。家庭医の診療可能な健康問題は専門医と比較し非常に多く、日常的な健康問題の90%以上が解決可能であることが認知されています。時に、家庭医の受診が難病の診断の糸口となることもあります。家庭医は必要に応じて各専門医と連携し、皆様に最良のケアを提供します。
家庭医の特徴
「家族まるごと」診療する
家族は心身ともに、お互いの健康状態に大きな影響を与えています。単純な体の不調だけでなく、生活環境などを鑑みて総合的に診療し、ご家族みなさまのかかりつけ医を目指します。
病気の治療だけでなく、予防医療まで総合的に診療する
発熱、ケガ、生活習慣病等の病気の治療はもちろん、「タバコをやめたい」「食生活を見直したい」などの予防医療まで、総合的に診療いたします。また、医学的には投薬が望ましい場合であっても、患者の価値観を尊重して、薬を使用しない治療法を共に探求することも可能です。
健康的な地域をつくる役割も担う
地域を構成している経済・行政・交通・教育などの諸条件は地域によって異なるため、診療をしていく中で地域全体が抱える問題に気づき、より健康的な地域にしていくための発信をするのも家庭医の役割です。地域の健康を高める活動として、学校や企業での講演も積極的に行います。
家庭医は、「あなたの価値観、家族、社会にも目を向けた医師」であり、一人ひとりの患者に対してより広い視野でのケアを提供します。